ねこがテリトリーにしている地域には、愛護動物(動物愛護管理法で決められています)を所管する行政職員が置かれることになっています。

動物愛護管理法には、ねこや愛護動物から人への侵害を防ぐことと、ねこや愛護動物にも命あるものという考えに照らし合わせて、人々と動物も一緒にその関係を保てる心配りをすることなどが決められています。このような決まりを、ねこがテリトリーにする地域でも、実際に行えるようにする行政の担当官が置かれることになっています。

地域のねこに、何かの手を差し伸べようとするとき、多くの疑問や障害がたちはだかることも少なくありません。そのようなとき、すぐにアクシデントの地域に出かけられたり、また適切な対応ができる公的なアニマルレスキューのシステムもありません。

地域のねこに関係する、さまざまな出来事が起った時には、その都度その地域の事情を充分に見極めた対応を、その地域の人たちが中心になって行わなければいけなくなります。

地域の人たちが何かを行うときに大切になるのが、その地域を管轄する愛護動物所管行政の、法に基づいた行政指導や行政措置です。

地域のねこに係わるさまざまな出来事に手を差し伸べようとする際に、まずその前に確かめておきたいことは、地域を所管する行政が、愛護動物のノラネコに対してどのような対応を行っているのかということです。

実際の地域を所管する、地域行政の愛護動物担当は、各都道府県や市区町村の事情によって、一般には分かりにくい組織になっていることが多いので、適切な情報を確かめる方法も簡単ではありません。

「都道府県単位では愛護動物所管の職員を置いているが、市区町村には担当職員が置かれていない場合」「政令都市や中核都市では、都道府県と異なる指導などを行っている場合」「都道府県の所管は決められているが、実際の作業は、都道府県の保健所支所や動物愛護センター支所のほか、清掃担当などが行っている場合」などさまざまです。

例えば、ねこに関する出来事があった地域の「市」には、愛護動物の担当がいて、なおかつ市内に支所を置く県の保健所も同様の担当を置いていることなどもありますし、また、市には所管職員を置かずに、県の保健所やセンター支所が、市の地域を管轄することもあります。

ねこに関するさまざまな出来事に手を差し伸べる前に、その地域を管轄する「愛護動物主務所管」を知っておく必要があります。

  1. 都道府県に「動物愛護管理法による愛護動物行政所管」の有無を電話などでたずねることができます。
  2. 愛護動物所管が分かったときに、あてはまる市区町村の「愛護動物所管」の有無を今度は都道府県の所管へたずねます。
    ※この問い合わせの際に大切なのは、具体的な相談内容ではなく、「法による所管」があるのかないのかを適切に知ることです。「ノラネコに手術をしたい」などの具体的な相談の場合には、県や市などが理念とする措置とは異なり、相談電話をとった職員からそれなりに事務的なお返事しかもらえないこともあります。
  3. 地域の所管の有無と同時に、その前段におかれ、地域も総括する立場の都道府県主務所管が、愛護動物の「ノラネコ」に対して、どのような基本原則的な対応や措置、または指導の理念などを持って、実行し指導しているのかなどの適切な情報を得ます。

法による「愛護動物行政主務所管」では、都道府県や市区町村、または政令都市や中核都市の区別なく、ねこや愛護動物から人への侵害を防ぐことと、ねこや愛護動物にも命あるものという考えに照らし合せて、人々と動物とも一緒にその関係を保つ心配りをすること、などを基本原則にした指導や措置を行います。

地域行政の所管が分かったときに、地域のねこに関係する具体的な出来事に関して、指導や措置の内容を確かめることができます。

「ねこのテリトリーに、ねこからの生活侵害苦情を訴える人がいる」「保護・手術・返還の『ノラネコ対策』プログラムを公にできない」などの場合には、地域の所管が「地域ねこ計画」の有効性を認めているのか、あるいはそのほかの適切な指導があるのか? などの指導情報を得ます。

行政が、地域のねことの共生を基本原則的な要綱などに取り入れている際には、ねこがテリトリーにしている地域のどなたかによって、そのねこたちに何らかの保護や管理がされている同じところで生活する住民に対して、ねこへの手助けの内容をお知らせすることができます。

地域の行政が、具体的な措置要綱やガイドラインを定めていない場合でも、基本原則的な実行方法が、行政の理念に従った手段であるなどとして表明できますので、ねこの保護・手術・返還プログラムを公にすることが可能です。また、このプログラムを公にして地域とも協働で行える場合には、人員や費用などの捻出方法も異なってきます。

「餌をやっているノラネコが極端に少なくなった」「ねこが殺傷行為をうけているらしい」「ノラネコを譲渡に出したい」などやそのほかの出来事に際しても、事前に地域を所管する行政の基本原則的な対処方法の情報を得ることが必要です。

何らかの事件などで、ねこが被害を受けていることが確かな際には、地域の愛護動物所管と警察などが連係して対応することになります。

ノラネコやお外暮らしのねこと人間との関係について、駆除(追い払う)という考えでは地域の環境保全問題が解決しないことをうけて、生活侵害苦情などを防除(防ぎ除く)方法に変わっています。つまり、ねこを排除するのではなく、人間同士の生活侵害苦情となっている原因を断つという考え方に基づいた長期的な措置です。

ねこがテリトリーにしている地域で、健康を保ちながらいつまでも自由に生き続けられることは望まれますが、その環境で生活する人間も多くいます。人もねこもその数が多くなると、自然に環境保全が必要となり、生活侵害苦情も多くなります。

そして、そのような地域は全国のいたるところにあります。ねこのいる地域から原因を断つためには、ペットのねこからこれ以上のノラネコを出さないための普及啓発とあわせて、ねこに対して人が行う殺傷などの事件を防止し、今お外で生きているねこを、そのテリトリーの中で適切に保護や管理をする方法などが取り入れられます。

地域行政に動物の引取りを求めるとき、飼えないなどの安易な理由の自粛を促す自治体もあります。引取った動物の多くに生存の機会を与えられる行政システムを確立している自治体はありません。余剰動物といわれてしまう場合のねこの保護や管理のできる施設を、自治体ですら設置できないですから、全国各地の市民が独自で各市区町村に建設運営することも困難です。

地域のねこに関係する出来事があって、そのねこに手を差し伸べようとするときに、行政の基本原則的な理念に従った、市民との「協働」という方法もとられています。

この方法を行うにはねこのそばで暮らす人々の手助けがなくてはいけませんから、手助けの後押しとなる地域行政の考えを前もって知る努力も大切です。