地方自治体等は、動物の愛護及び管理に関する法律に基づき、愛護動物行政施策措置等の適切な執行が困難な際に、条例の制定に配慮します。

先進海外の事例では、命ある愛護動物が、人のために働く動物とみなされる世論の風潮に対し、行政の執行措置において、いかような範囲迄規則または規制するかが問われ、市場経済活動などの分野からの規制を緩める要望をいかに押さえるかなど、法を制定する側の大きな課題となっています。

生物多様性と自然環境や人間環境の保全と相まって、人の命ではないものの、やはり命を有する動物と人との共生に配慮する際に、人の作用に強い影響を受ける愛護動物施策は、極めて厳正且つ忠実に、強い責務や執行力を伴って行われるものです。

動物の愛護及び管理に関する法律(以下本法とします)の精神をもって、各地域行政が実行措置の行いにくい事態をかんがみながら、条例に必要と考えられる案件を本法の精神と照らし合わせます。

※本法内の「法律」を「条例」に、また必要な箇所を「市・市長」(或いは、県・知事/区・区長/町・村)等に置き換え、国に限らず地方自治体独自で想定され得る執行措置に書き換え、または書き加えます。
※条例の制定が必要な際には、本法の精神に準拠するものです。

(条例を想定し、本法を書き換え・以下同じ)第一章 総則(目的)
第一条 この条例は、動物の虐待の防止、動物の適正な取扱いその他動物の愛護に関する事項を定めて市民の間に動物を愛護する気風を招来し、生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養に資するとともに、動物の管理に関する事項を定めて動物による人の生命、身体及び財産に対する侵害を防止することを目的とする。

本法(そのまま)(基本原則)
第二条 動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。

(本法書き換え)(普及啓発)
第三条 市を始め警察、消防、教育委員会などの機関は、動物の愛護と適正な飼養に関し、前条の趣旨にのっとり、相互に連携を図りつつ、教育活動、広報活動等を通じて普及啓発を図るように努めなければならない。

(本法書き換え)(動物愛護週間)
第四条 ひろく市民の間に命あるものである動物の愛護と適正な飼養についての関心と理解を深めるようにするため、本法で定める動物愛護週間に限らず、その趣旨にふさわしい行事が実施されるように努めなければならない。

(本法書き換え・書き加え)
第二章 動物の適正な飼養及び保管 第一節 総則

(動物の所有者又は占有者の責務等)
第五条 動物の所有者又は占有者は、命あるものである動物の所有者又は占有者としての責任を十分に自覚して、その動物を適正に飼養し、又は保管することにより、動物の健康及び安全を保持するように努めるとともに、動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない。

2 動物の所有者又は占有者は、その所有し、又は占有する動物に起因する感染症の疾病について正しい知識を持つように努めなければならない。また、動物の生理や生態にかかわる近交劣化(または退化・近親交配等における弊害)などの知識を収得し、新たな動物間感染症や動物の疾病障害等の発生の防止に努めなければならない。

3 動物の所有者は、その所有する動物が自己の所有に係るものであることを明らかにするための措置を講ずるように努めなければならない。

4 市長等は、関係行政機関の長と協議して、本法で定める愛護動物の飼養及び保管に関しよるべき基準を定めることができる。

※本法ではよるべき基準等において、愛護動物を産業、展示、実験、家庭など、それぞれの分類に分け、更に動物取扱業を加えたそれぞれのよるべき基準等を定めています。

しかし、本法の精神を厳粛に踏襲する際に、愛護動物はその供される立場において、常に1個体が該当の分類に留まるとは限らないことなどから、法の整合性がはかれないことをうけて、条例では動物の供される分野に係わらず、愛護動物のよるべき飼養や保管に係わる基準を統合し別途定めるものとします。

(本法書き換え)(動物販売業者の責務)
第六条 動物の販売を業として行う者は、当該販売に係る動物の購入者に対し、当該動物の適正な飼養又は保管の方法について、必要な説明を行い、理解させるように努めることのほか、自らも終生飼養、適正飼養、繁殖制限の責務を持つことを自覚し、条例で定める規則に従うものとする。

(本法書き換え)
第二節 動物取扱業の規則(条例において動物取扱業は許可制とする)
第八条 動物(哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するものに限り、畜産農業に係るために飼養し、又は保管しているものを除く。以下この節及び次節において同じ。)の飼養又は保管のための場所を設定して動物取扱業(動物の販売、保管、貸出し、訓練、展示、1頭の愛護動物からの出産が複数回に及ぶ所有者等、その他政令で定める取扱いを業として行うことをいう。以下同じ)を営もうとする者は条例で定めるところにより、次の事項を市長に届け出、許可を得なければならない。

一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては代表者の氏名
二 飼養する場所の名称及び所在地
三 主として取り扱う動物の種類及び数
四 飼養施設の構造及び規模(営巣の箇所は規模の大小を問わない)
五 飼養する場所の管理の方法
六 その他条例で定める事項

2 前項の規定による許可は、別途定める審査等が伴い、認定を必要とする。(以下同じ)

(本法書き換え)(変更の届出)
第九条 前条第一項の規定による届出をした者(以下「動物取扱業者」という。)は、同項第三号から第六号までに揚げる事項の変更をしようとするときは、総理府令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。且つ、市長に届出し許可を受けなければならない。
2 動物取扱業者は、前条第一項第一号若しくは第二号に揚げる事項に変更があったとき、又は届出に係る施設の使用を廃止したときは、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。且つ、市長が定める措置に従わなければならない。
3 前条第二項の規定は、第一項の規定による届出について準用する。

(本法書き換え)(承継)
第十条 動物取扱業者について相続又は合併があったときは、相続人又は合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人は、当該動物取扱業者の地位を承継する。
2 前項の規定により動物取扱業者の地位を承継した者は、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。且つ、市長に届出し許可を受けなければならない。

(本法書き換え・書き加え)(基準遵守義務)
第十一条 動物取扱業者は、動物の健康及び安全を保持するために飼養施設の構造、その取り扱う動物の管理の方法等に関し市が定める基準を遵守しなければならない。
2 動物取扱業者は、動物の健康及び安全を保持するため、前項の基準に加えて動物取扱業者が遵守すべき条例などに従うものとする。(※生物多様性等に配慮し、人に供される動物の抑止を図る目的の条例を別途制定する。)

(本法書き換え)(勧告及び命令)
第十二条 市長は、動物取扱業者が前条第一項又は第二項を遵守していないと認めるときは、その者に対し、期限を定めて、飼養施設の構造、その取り扱う動物の管理の方法等を改善すべきことを勧告することができる。
2 市長は、前項の規定による勧告を受けた者がその勧告に従わないときは、その者に対し、期限を定めて、その勧告に係る措置をとるべきことを命じ、許可の撤回ができる。

(本法書き換え)(報告及び検査)
第十三条 市長は、第八条から前条までの規定の施行に必要な限度において、動物取扱業者に対し、飼養施設の状況、その取り扱う動物の管理の方法その他必要な事項に関し報告を求め、又はその職員に、当該動物取扱業者の施設その他関係のある場所に立ち入り、施設その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
※本法に従い条例において動物取扱業は許可制とし、規制措置を加える根拠法は下記の条項等による。

(条例による措置)第十四条 都道府県又は指定都市は、動物の健康及び安全を保持するため、必要があると認めるときは、飼養施設を設置して動物取扱業を営む者(動物取扱業を営もうとする者を含む)に対して、この節に規定する措置に代えて、動物の飼養及び保管に関し、条例で、特別の規制措置を定めることができる。

(本法書き換え・書き加え)第三節 周辺の生活環境の保全に係る措置
第十五条 市長は、多数の動物の飼養又は保管に起因して周辺の生活環境が損なわれている事態として定める事態が生じていると認めるときは、当該事態を生じさせている者に対し、期限を定めて、その事態を除去するために必要な措置をとるべきことを勧告することができる。
2 市長は、前項の規定による勧告を受けた者がその勧告に係る措置をとらなかった場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対し、期限を定めて、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。
3 市長は、地域における犬、ねこ等の動物の愛護の推進に熱意と識見を有する者に対し、前各項の規定による勧告又は命令に関し、市の施設の運営に関する、必要な協力を求めることができる。

(飼養禁止について/書き加え)
4 前1項の事態が反復継続する際に、市長は期限を定めて、飼養の禁止等必要な措置をとるべきことを勧告し命令することができる。第二節の動物取扱業に準用。

5 前4項にの命令には、飼養頭数制限を含む。
※本法の精神に従い、条例中に規制措置などを定める根拠法は次条項です。

 第四節 動物による人の生命等に対する侵害を防止するための措置
第十六条 地方公共団体は、動物による人の生命、身体又は財産に対する侵害を防止するため、条例で定めるところにより、動物の所有者又は占有者が動物の飼養又は保管に関し遵守すべき事項を定め、人の生命、身体又は財産に害を加えるおそれのある動物として政令で定める動物の飼養について許可を必要とする等により制限し、当該動物の所有者又は占有者その他関係者に対し、当該動物による人の生命、身体又は財産に対する侵害を防止するために必要な措置をとるべきことを命じ、必要があると認めるときは、その職員に、当該動物の所有者又は占有者の飼養施設を設置する場所その他関係のある場所に立ち入り、当該動物の飼養状況を調査させる等動物の飼養及び保管に関し必要な措置を講ずることができる。

(本法書き換え) 第五節 動物愛護担当職員
第十七条 市長は、第十三条第一項の規定による立入検査又は本条例の規定による立入調査その他の動物の愛護及び管理に関する事務を行わせるため、動物愛護管理員等の職名を有する職員(次項において「動物愛護担当職員」という。)を置く。
2 動物愛護担当職員は、市の職員であって獣医師等動物の適正な飼養及び保管に関し専門的な知識を有するものをもって充てる。

(犬及びねこの引取り)
第十八条 市は、犬又はねこの引取りをその所有者から求められたときは、これを引き取らなければならない。市は、その犬又はねこを引き取るべき場所を指定することができる。
2 前項の規定は、市が所有者の判明しない犬又はねこの引取りをその拾得者のほか、警察や消防などの機関等から求められた場合に準用する。
3 市は、引き取った動物に対して、飼養希望者の発見など飼養の機会を与えるほか、飼養の継続に努めるものとする。
4 市は引き取った動物の飼養の継続の施設を設置するほか、動物の愛護を目的とする公益法人その他の者に犬又はねこの引取り及び飼養の機会を継続させる措置等を委託することができる。
5 市長は、1項の引き取りに際し、終生飼養の責務及び繁殖制限の責務などの引き取りに係わるよるべき基準を定めるものとする。
6 市は、別途定めるところにより、第1項の引取りに関し、かかる費用の一部を徴集することができる。

(本法書き換え)(負傷動物等の発見者の通報措置)
第十九条 道路、公園、広場その他の公共の場所において、疾病にかかり、若しくは負傷した犬、ねこ等の動物又は犬、ねこ等の動物の死体を発見した者は、すみやかに、その所有者が判明しているときは所有者に、その所有者が判明しないときは市長等に通報するように努めなければならない。
2 市長等は、前項の規定による通報があったときは、その動物又はその動物の死体を収容しなければならない。
3 前条第五項の規定は、前項の規定により動物を収容する場合に準用する。

(本法書き換え・書き加え)(犬又はねこの繁殖制限)
第二十条 犬又はねこの所有者は、これらの動物が繁殖してこれに適正な飼養を受ける機会を与えることが困難となるようなおそれがあると認める場合には、その繁殖を防止するため、生殖を不能にする手術その他の措置をしなければならない。第二節の動物取扱業に準用。
2 市長等は、前項の規定による措置を怠った者に対し飼養の禁止を命ずることができる。市長等は、犬又はねこの引取り等に際して、前項に規定する措置が適切になされるよう、必要な指導及び助言を行うように努めなければならない。
3 前各項は、犬及びねこに限らず本条例で定める愛護動物に準用するものとする。

(本法書き換え)(動物愛護推進員)
第二十一条 市長等は、地域における犬、ねこ等の動物の愛護の推進に熱意と識見を有する者のうちから、動物愛護推進員を委嘱することができる。
2 動物愛護推進員は、次に揚げる活動を行う。

一 犬、ねこ等の動物の愛護と適正な飼養の重要性について住民の理解を深めること。
二 住民に対し、その求めに応じて、犬、ねこ等の動物がみだりに繁殖することを防止するための生殖を不能にする手術その他の措置に関する必要な助言をすること。
三 犬、ねこ等の動物の所有者等に対し、その求めに応じて、これらの動物に適正な飼養を受ける機会を与えるために譲渡のあっせんその他の必要な支援をすること。
四 犬、ねこ等の動物の愛護と適正な飼養の推進のために市等が行う施策に必要な努力をすること。
五 引き取った動物の飼養の継続のための市の施設への協力。

(本法書き換え)(協議会)

(本法書き換え)(協議会)
第二十二条 市等、動物の愛護を目的とする公益法人、獣医師の団体その他の動物の愛護と適正な飼養について普及啓発を行っている団体等は、市等における動物愛護推進員の委嘱の推進、動物愛護推進員の活動に対する支援等に関し必要な協議を行うための協議会を組織することができる。協議会は、動物を実業に供している構成員で組織しない。

(本法書き換え)
第四章 雑則
(動物を殺す場合の方法)
第二十三条 動物を殺さなければならない場合には、その動物に苦痛を与えない方法によってしなければならない。
2 市長は、関係行政機関の長と協議して、前項の方法に関し必要な事項を定めることができる。

(本法書き換え)(動物を科学上の利用に供する場合の方法及び事後措置)
第二十四条 動物を試験研究又は生物学的製剤の製造の用その他の科学上の利用に供する措置を市は認めないものとする。

(追加条項・本法で定めがないもの)(緊急災害時の措置)
第---条 緊急災害時の動物救済措置は、事前に避難場所に想定される建造物等の構造に平常時より配慮するほか、愛護動物の所有者等に運搬用の用具保持要綱を設けるなど、各関係機関などと協議し別途定めるものとする。
2 前項は災害基本法に準ずるものとし、愛護動物及び危険動物あるいは特定動物に関し、緊急災害時におけるよるべき基準を定める。

(本法書き換え)(経過措置)
第二十五条 この条例の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制度又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

(本法書き換え)(動物愛護審議会)
第二十六条 市に、動物愛護審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、市長の諮問に応じ、動物の愛護及び管理に関する重要事項を調査審議する。
3 市長は、第五条第四項、第十一条第一項の基準の設定、第十五条第一項の事態の設定又は第十八条第五項(第十九条第三項において準用する場合を含む。)若しくは第二十三条第二項の定めや、そのほか本条例で必要とするときは、審議会に諮問しなければならない。基準、事態又は定めを変更し、又は廃止しようとするときも、同様とする。
4 審議会は、動物の愛護及び管理に関する重要事項について市長に意見を述べることができる。
5 審議会は、委員十五人以内で組織する。
6 委員は、学識経験のある者のうちから、市長が任命する。ただし、その過半数は、動物に関する専門の学識経験を有する者のうちから任命しなければならない。動物を実業に供している者は委員から除かれる。
7 委員の任期は、二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
8 委員は、非常勤とする。
9 前各項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、別途定める。

(本法そのまま・参考) 第五章 罰則
第二十七条 愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2 愛護動物に対し、みだりに給餌又は給水をやめることにより衰弱させる等の虐待を行った者は、三十万円以下の罰金に処する。
3 愛護動物を遺棄した者は、三十万円以下の罰金に処する。
4 前三項において「愛護動物」とは、次の各号に揚げる動物をいう。
 一 牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、ねこ、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
 二 前号に揚げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの
第二十八条 第十二条第二項の規定による命令に違反した者は、三十万円以下の罰金に処する。
第二十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、二十万円以下の罰金に処する。
 一 第八条第一項又は第九条第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
 二 第十三条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
 三 第十五条第二項の規定による命令に違反した者
第三十条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

第三十一条 第九条第二項又は第十条第二項に規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、二十万円以下の過料を処する。

条例による罰則については、法改正時の付帯決議事項等への配慮が望まれます。諸事規制緩和の風潮の中で、こと愛護動物文化に関しては、未だ規制の不備が指摘されています。産業や商用、愛玩など実業の市場経済活動に供される動物などについて、法や条例における制約や行政執行力がどの範囲まで及ぶことができるのか、世界共通の課題とされており、生体陳列販売禁止措置などの実効性をもつ規制等が条例に求められます。

本法改正時に規則されてはいないものの、条例等にて規則等の制定に配慮される件については、法改正時の付帯決議事項に記されています。

(参考資料)付帯決議 (1999.12.9 衆議院通過)動物の保護及び管理に関する法律の一部を改正する法律案の提出に伴う決議

 政府は、本法の施行に当たっては、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

一 飼い主が所有権を放棄した犬及びねこ以外の愛護動物や虐殺を受け保護が必要な動物については、第二十一条の「動物愛護推進員」の活動として新たな飼い主や引取り先の斡旋が行われることが想定されるところである。都道府県等は、第二十二条の「協議会」の構成員として、この動物愛護推進員の活動を支援していくことが法律上望まれているところであり、このような都道府県等の活動に対する国としての支援について検討し適切に措置すること。

●市には、警察や消防などからの引き取り動物に対して、事件の解決あるいは負傷の回復にいたる、飼養の継続に努められる施設或いはシステムの構築が求められています。

●飼い主の緊急避難的な、他に方法が無いヤムを得ない事態の引き取りを除き、そのほかの事由などで引き取り申請される動物をなくすために、市には実効性を持つ行政施策が求められています。

二 学校や福祉施設などにおける動物の適正な飼養については、その近時における重要性の高まりを踏まえ、獣医師等による指導の実施などそのあり方について検討を行い、関係行政機関が適切に連携しつつ、第五条第四項の内閣総理大臣が定める基準の中に盛り込むなどの措置を行うこと。

●学校飼育動物のうさぎなどの教育的効果や飼養実態などについては、既に議論がされているところであり、学校飼育動物の実態には多数の危険や疑義が提示されています。適切な愛護動物文化事情を学校などで理論学習する重要性を検討の上、教育庁(教育委員会)等の関係機関とも連係したもとで、知識教育に取り入れることが求められます。

三 飼い主責任の意識の高まりを踏まえつつ、公園等公共施設の利用のあり方についても検討を行うこと。

●緊急災害時動物救済措置にも関連し、公共的な施設と人と動物との共生は実行施策に求められています。

四 犬及びねこの引取りについては、飼い主の終生飼養の責務に反し、やむを得ない事態としての所有権の放棄に伴う緊急避難措置として位置付けられるものであり、今後の飼い主責任の徹底につれて減少していくべきものであるとの観点に立って、引取りのあり方等につき、更なる検討を行うこと。

●徘徊する愛護動物からの迷惑被害等は、適切な行政施策の実行により、飼い主や取扱業の適切な意識の向上に従いなくなるものです。条例では適正な終生飼養や繁殖制限責務違反に対する罰則の他、飼養の禁止措置などの検討が求められます。

五 日本の伝統芸能に係る三味線等の製造に支障をきたさないよう、伝統文化の保護の行政とも連携して、都道府県等に引き取られ殺処分に付されている犬及びねこの活用などにおいて適切な配慮がなされるよう措置すること。

●歴史的に顧みても、文化は時代に準じて変革継承されています。適切な愛護動物文化土壌が高揚した場合には殺処分に付される動物は減少しますから、行政措置において引き取り動物活用への配慮は無用です。

六 ペットの放置・遺棄による在来種への圧迫をはじめとした外来種・移入種による地域の生態系への影響の防止の観点から、動物の飼養及び保管のあり方など外来種・移入種に関する対策を検討し適切に措置すること。

●該当の動物や、危険(特定)動物は、市内において飼養及び取り扱い禁止なども含めた規制措置が求められます。

七 国、地方公共団体を通じて本法の適切な施行・運用のための体制の整備・充実を図ること。

●法の精神に基づき、命の尊厳を心得た実行施策が望まれます。

八 附則第二条に基づき検討を行うに当たっては、次の事項について、適切に措置すること。
 1 動物取扱業者の届出制については、その実施状況を調査し、問題の発生の有無等によりその有効性を評価するとともに、東京都の登録制の条例制定など先進的な取組を踏まえ、優良業者の育成、消費者保護等の観点も加味した登録制などの措置について、実施可能性も含め検討を行うこと。
 2 規制対象となる取扱業の範囲についても、問題発生の状況や、東京都などにおける条例の見直しの状況などを踏まえ、検討を行うこと。

 3 規則に営業(業務)停止に係る命令等の措置を加えることについては、問題発生の実態等を踏まえ、その必要性や有効性を含め検討を行うこと。

●市内の動物取扱事業は届出後の審査許可制とし、生体の陳列販売やみだりな繁殖流通を禁止するなどの措置実行が可能です。また、反復継続して出産させる者を取扱業とする本法をうけて、終生飼養を望まない出産を事業と認めることが可能であり、免許制度そのほかの規制の強化が求められます。

 4 罰則の対象となる虐待の定義等については、本法に基づく摘発や立件等の状況を踏まえ、見直しの必要性も含め検討を行うこと。

●本法では従来からの虐待が動物殺傷、および飼い主責務の範囲において新たに衰弱虐待が規則されたことをうけて、条例では殺傷犯罪や衰弱虐待犯罪抑止を図るために、さらに理解を得られやすい工夫が必要と思われます。

●小動物への殺傷犯罪が、重大犯罪に結びつくことをうけて、市は関係各機関などとの緊密な情報交換を整備しなくてはいけません。

●また、高齢化社会においては、飼い主の高齢化などの身体的事情などにより、不可抗力的なヤムを得ない事態での、動物の不適切な飼養や保管に係わる動物衰弱虐待行為も想定されはじめています。市の高齢者福祉機関や、動物愛護に見識を有する市民などと情報交換に努め、協働した将来展望が求められます。

 5 愛護動物の範囲については、本法で爬虫類を追加したところであるが、熱帯魚などが観賞用として増加していることなども踏まえ、今後の問題の発生状況等必要に応じてその見直し等につき検討を行うこと。

●生物多様性の抑止については既に魚類による自然環境などへの侵害が問題になっており、該当の生き物は多岐に及ぶと考えられます。地域自然環境の保全とあいまって、条例での規制強化が求められます。

 6 今回の改正案に盛り込まれていない事項(動物の取扱や情報公開等)についても、地方公共団体等における各種の取組等を踏まえ、動物の適正な飼養の推進の視点から検討を行うこと。

●主に動物が商用に供される事態等は、一般に知られない業態などもあり、取扱い業にかかわらず公開するなど、愛護動物施策の普及啓発に努める工夫が必要です。また、自然環境保全法等に基づく、学術的且つ専門的であって尚長期間に渡り人と動物と環境などに関する事態の調査と情報の公開が求められます。