ねこへの餌やり禁止とは?

餌やり禁止は、地域のコミュニティを閉ざされたものにする恐れを含みますが、野良ねこ問題を根本的に解決した前例を聞きません。

「餌やり禁止」が表明されるときには、ねこに手を差し伸べるどなたかがいます。このどなたかも交えて、地域ねこプランについて、地域住民双方の理解や合意を図ることが求められます。

その第一歩は、お家の飼いねこの飼い主さんに対して「正しいねこの飼い方」を知っていただくことからはじまります。

動物愛護管理法やペット条例などに基づいて、地域の愛護動物所管行政が、適切な普及や啓発を古くから怠らなかったとしたら、お家の飼いねこからの、野良ねこの発生を前もって防げたからです。

お家の飼いねこの飼い主さんに、正しいねこの飼い方の普及や啓発をするのは、地域行政の役割です。「餌やり禁止」に代り、環境の保全を図る適切な措置を担うのも、地域の所管行政ですから、先ず地域所管行政との合意が必要になります。

行政は、法を威圧的に執行することを避けながら、法の精神(リーガルマインド)に従い、合理的な整合性に基く公益性に心配りしつつ、適切な措置を施さなければいけないことになります。

「動物が命あるものであることにかんがみ・・・、人との共生に配慮・・・などをモットーにした法の下で、餌やり禁止に代り、行政の指導できる代表的な措置は「これ以上増やさないための繁殖コントロール」です。

また、愛護動物の多数頭飼育を制限する条例制定などの動きもあり、「野良ねこをお家に連れ込みなさい」などの指導は適切といえません。野良ねこをお家に連れ込ませることにより、連れ込ませられた人の財産権利などを侵すことにつながります。

よそに捨てると遺棄犯罪ですし、生活環境のねこは狩猟鳥獣と異なるため、駆除もできません。

飼われているねことも異なる「飼い主のいないねこ」への対策ですから、飼い主を特定するときの、強い飼い方指導もできません。このため、地域で適切な管理などに努めるよりほかに方法もありません。雌雄を別々にする繁殖コントロールは、外のねこに不可能ですから、繁殖制限手術が有効とされています。

餌やり禁止の措置が、事態の解決にならないことと、解決の方法として繁殖制限手術が有効とされていることの相互理解を深めて、双方合意の上で、適切な措置に向かうための努力も大切です。

無効な餌やり禁止措置に代わる有効な対策を、地域の所管行政を始め、その土地を管理する公益的な組織や企業のほか、町会や管理組合などと協働で行う機会も増えています。

閉ざされてしまい、衰退に向かうコミュニティでは、出入りする人も暮らしやすくありません。コミュニティの復活を目指し、動物との共生に心配りする地域の愛護動物担当官とは、前もって充分な理解を深めておくことも欠かせません。

有効な対策を進めるための、最初のアクションは、「お互いのお話し合い」の場を持つことになります。お話し合いのポイントになる内容を、プリント形式を想定し記しました。

お話し合いのポイント

「ねこへの給餌禁止措置の件」

 ねこへの給餌禁止措置が表明されました。次の理由などにより、ねこへの給餌禁止が有効な措置にならない事実をうけ、事態の解決を図ります。

 昭和48年に動管法(平成12年・動物の愛護及び管理に関する法律に改正)が施行されて以来、所有者の有無に係わらずねこは愛護動物です。
 同法では、動物取扱業やその他の事業や産業等に供される動物の、保護や管理に関する責務や罰則のほか、愛護動物の飼い主の責務及び罰則等が定められています。
 法による主な責務及び罰則は、(1)愛護動物の適正な終生飼養(2)繁殖し、適正な終生飼養が行えない場合の繁殖制限(3)遺棄は犯罪(4)衰弱させる等の虐待は犯罪(5)殺傷は犯罪 そのほか、やむを得ず譲るより他に方法が見当たらない場合に限り、適正に終生飼養が可能な飼い主を探すこともできること、などです。

 法は、国を始め各地方自治体等の普及啓発により、実行及び執行がなされる筈のものであり、自然環境の保全における生物多様性に配慮するとともに、みだりに徘徊する愛護動物の発生を抑止するなどの、人への侵害を防止する目的を併せ持つものです。(※生物多様性、は項目別途)
 これら抑止及び防止対策措置等の実行や執行の不備から、徘徊する愛護動物の発生する際には、行政不作為に陥らないための改善措置が行われます。

 愛護動物中、「危険」に分類される動物を除く犬は、狂犬病予防法に基づく登録制や罰則が決められており、所有者が容易に分かる点で、ねこやそのほかの愛護動物の保管等についての措置と異なっています。
 人の住環境のねこは、生物多様性に係わる狩猟鳥獣に該当しないため、駆除を目的とする遺棄行為に罰則が適用され、同様に致死処分を目的にする捕獲行為に於いて、捕獲時の態様等により、懲役刑を含む殺傷犯罪とも判断されます。

 地方自治体などに引き取り申請される愛護動物は、飼い主が新たな飼い主を求めても見つからなかった際に限り、飼い主の万事やむを得ず他に方法がみあたらない事由により、所有権の放棄に伴う緊急避難的措置として引き取りに応じるものとされています。引き取った地方自治体等は動物の飼養の継続に努めることともされているため、所有者でない者からの、駆除や致死処分を目的にする引き取りには安易に応じられず、万が一引き取りに応じた場合には、法を超えた措置になってしまいます。
 致死処分施設は、今ではなくなった「狂犬病にかかった犬」と狂犬病の撲滅を目的に作られたものです。徘徊するねこの駆除措置が極めて難しく、行いにくい理由の一部が上記などです。

 所有者がなく、既に徘徊しているねこは、その生態や習性等によりテリトリーを決めるため、自然環境や人の生活廃棄物などからも餌を求めます。また、ねこは極めて旺盛な繁殖能力を持っています。定時定点の給餌ルールがなくなった折に、ねこはさまざまなエリアにテリトリーを求めはじめることから、ねこからの新たな侵害範囲を人為的に広げてしまいます。大規模な複数の建物がある例などでは、建物への浸入を起させる原因になります。これらも、給餌禁止が有効な措置にならない理由です。

 法の精神や基本原則により、動物が命あるものであることにかんがみ、人との共生に配慮されることをうけて、地方自治体等では警察や地域住民などと協働し、野良ねこを出さないために前もって、飼い主に対する遺棄違反対策を始め、殺傷違反対策、繁殖制限や適正な終生飼養などの実行や普及啓発に努めるものとされています。

 公益性に配慮し、社会貢献を担う組織等では、給餌禁止や駆除に代わり、同法の精神を尊ぶ適切な事態の解決方法が図れます。

 ねこへの給餌禁止措置が表明された地域で、行政や住民と協働し事態を解決するための、そのほかの具体的な措置等については、専門的な知識や技術を持つ者等より改めてご連絡させていただくことができます。

上記の内容は、給餌禁止が有効な措置にならない理由の概略を伝える目的のものです。「それならどうすれば解決に向かえるのか?」という事については、ねこに思いを寄せる有志ほかの努力によって、地域ねこプランなどが試みられています。

指導的な立場の管轄行政官、土地を管理する住民組織、地域の餌やりさんなどと情報交換に努め、互いの合意を目指して協力し合いながら、事態の改善に向かう対策が、皆さまの地道な努力によって行なわれています。